2025年11月月次祭講話

 本日は皆さまとともに11月の月次祭を勇んでつとめさせていただけたことを、心から嬉しく思います。ご参拝いただきました皆さまに、心より感謝申し上げます。

本日は「天の与え」についてお話をさせていただきます。

今年の9月に、ある信者さん宅の講社祭をおつとめした後、そのお宅の方から鹿の肉をいただきました。500gほどの塊が4つほどありましたので、2kgほどはあったと思います。ありがたく頂戴し、早速調理させていただきました。まず下処理として血抜きをします。肉を調理しやすい大きさに切り分け、調理酒と塩にしばらく漬けておくと、血が抜けて赤みを帯びていた肉が灰色に変わります。この工程を2回繰り返した後、今度は灰汁抜きです。ネギの青い部分と生姜を入れて煮込むことで、独特の臭みも取れます。灰汁はホイップクリームのようにモコモコとビックリするほど沢山出てきますが、それを丁寧に取り除きます。ここまでで下準備が完了です。あとは圧力鍋で醤油・みりん・砂糖・ニンニクなどを加えて煮込みます。我ながら美味しくできたと思います。

 北海道の先住民族であるアイヌの人々は、古くから狩猟によって生活していました。鹿は「カムイ(神)の化身」とされ、人間が必要な分を、神様が天から授けてくださると考えられていました。そのため、捕れた鹿は一切無駄にせず、肉を食べるのはもちろん、脳も食し、骨は儀式や装飾に、皮は衣類として活用していました。少しでも無駄にすれば、神様からの与えが減るとアイヌの人々は信じていたのです。

 この考え方は、天理教の教えにも通じるものがあると思います。
 昨年の秋ごろ、テレビで鮭の密漁現場の映像を見ました。そこに映し出されていたのは、鮭の腹を裂いて、筋子(いくら)だけを取り出して、鮭そのものは大量に捨てられ散乱している光景でした。その映像を見て、私はとても胸が痛みました。そして今年の秋、やはり鮭が不漁となり、北海道に住む私たちでさえなかなか口にできなくなりました。筋子も1本4,000~5,000円という高級品になっています。私は、これは親神様が「そんなに鮭を無駄にするのなら、必要ないのだろう」と、恵みを減らされたのだと思いました。

 また、今年は「令和の米騒動」と言われるほど米が不足し、価格が高騰しました。毎日当たり前に食べているお米が、一昨年に比べて倍以上の値段になったのです。私は普段、お茶碗についたお米一粒も残さず食べているので、自分ではお米を無駄にしていないと思っていました。しかし、以前にもお話しましたが、欠品ペナルティーというものがあると知り驚愕しました。おにぎり製造会社が、コンビニへの納品遅れによるペナルティーを避けるため、必要以上に作って余った分を廃棄しているというのです。いつもコンビニに行けばおにぎりが陳列しているという便利さの裏側に、そんな大きな無駄があると知り、改めて考えさせられました。これもまた、「お米も必要ないのなら減らすぞ」と親神様がお知らせくださっているのではないかと思いました。

 明治二十一年九月十八日のおさしづには、次のようなお言葉があります。

 「天のあたゑというは、薄きものである。(中略)めん/\年々のあたゑ、薄きは天のあたゑなれど、いつまでも続くは天のあたゑという。」

 「天のあたゑというは、薄きものである」とは、親神様からの恵みは、あまりにも日常の中に当たり前のようにあるため、私たちがそのありがたさを感じにくく、つい忘れがちであるという意味です。人間の身体は親神様からの“かりもの”であり、その身体を使って働くことで収入を得ています。形の上では自分の労働の対価として給料をいただいていますが、健康で働けること自体が、すでに親神様のご守護の現れなのです。そのことを決して忘れてはならないと思います。

 さらに「薄きは天のあたゑなれど、いつまでも続くは天のあたゑという」とは、たとえ小さな恵みであっても、それが長く続くことこそ本当の“天の与え”だという教えです。人はどうしても「もっと欲しい」「もっと良くなりたい」と願いますが、たとえ十分でなくても、今ある恵みに感謝して喜び勇んで暮らしていけば、その恵みは続いていくのです。

 また、教祖は「働くというのはハタハタのものを楽にするから働くというのや」と教えられました。つまり、働くということは自分のためだけではなく、他人を楽にし、社会を立てる行いです。ましてや楽をして高い所得を望む姿勢は、一時は良く見えても、決して長続きはしません。

 本日は「天の与え」についてお話をさせていただきました。親神様の与えは、目に見える大きな恵みよりも、日々の平凡な暮らしの中にこそ宿っています。その“当たり前”に感謝し、無駄なく、互いにたすけ合って生きるところに、末永く続くご守護が現れるのだと思います。「自分さえ良ければ」という利己的な考えや、「今さえ良ければ」という刹那的な思いを離れ、互い立て合い、たすけ合いながら、それぞれの場所で“天の与え”を感じながら、陽気ぐらしの道を歩ませていただきましょう。

ご清聴ありがとうございました。

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相談者:教会長
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